前回の記事
《個々の学習到達度・発達段階に寄り添った学びの必要性① ― “同じ子ども”は一人もいない時代の教育へ ―》
では、
「学年一斉型の教育は、子どもの“違い”を前提にしていない」
という根本的な問題を取り上げました。
同い年でも学力は違い、
同じ学力でも発達段階が違い、
同じ発達段階でも興味・不安・経験がまったく違う。
つまり教育とは、「同じ子どもは一人もいない」
という前提に立ったときにはじめて、正しい方向に進み始めます。
では、違いを尊重した“個別最適な学び”は、実際どれほど価値があるのでしょうか。
今回の記事では、
「個別最適な学びは、実はもっとも効率がよい」
「現代社会が個別最適化を求める本質的な理由」
を深掘りしていきます。
5.個別最適な学びは「効率」が悪い?― 実はそれこそが“最短ルート”である理由 ―
個別最適な学びに対して、多くの保護者が抱く誤解があります。
それは、「一人ひとりに合わせる=非効率」という考え方です。
個に合わせるより、「平均に合わせたい」、「学年相応の学習をすべき」、という考え方になりがちです。
しかし、教育現場に立つ者として断言できます。
“その子に合わせる学び”こそ最も効率が良い
遠回りに見えて、実は最短で伸びる
そう言える理由は、次の3点に集約されます。
① わからないところを放置すると、後で学びが“崩壊”する
算数・英語・読解など、多くの教科は「積み上げ型」です。
土台が弱いまま進むと、
- 授業が理解できない
- テストで点が取れない
- 復習量が膨大になる
- “勉強=苦手”という誤学習を起こす
という悪循環に陥ります。
特に恐ろしいのは、
勉強ができないことより「自信」が崩れ落ちること。
その子の理解に合わせて戻り、
発達段階に合った説明で理解をつくることは、
実は 長期的には圧倒的な時間短縮 になるのです。
② 理解が進んでいる部分を止めると、“学びの勢い”が失われる
逆に理解が早い子が、一律のペースで足止めされると、
- 退屈
- 意欲の低下
- 思考力の停滞
- 「学ぶこと=つまらない」という誤学習
につながります。
子どもは「わかった!」と思えた瞬間に集中のピークが訪れます。
この勢いを止めるのは教育的損失です。
そのため、学びの勢いがついたら、
「そのまま次に進む」ことが最も効率的な学びになります。
③ 発達段階に合わない課題は、努力しても“成果につながらない”
努力が成果に結びつかない経験は、子どもの心を深く傷つけます。
- 抽象思考が未熟なのに文章題
- 語彙が少ないのに長文読解
- 注意の持続が弱いのに大量の作業
- 手先が不器用なのに漢字の書き取りを大量に
どれも「やらせれば伸びる」ように見えますが、
実際には 努力が空回りし、自己肯定感を下げるだけ になりかねません。
逆に、発達と到達度に合った課題は、
成功体験
→ 自信
→ 挑戦意欲
→ 学習量の増加
→ さらなる成長
という“上りのスパイラル”を生みます。
個別最適な学びは“手間”はかかります。
しかし、
- 子どもが本当に伸びるスピード
- 伸び続ける持続力
- 自分で学ぶ力
という教育の本質を考えれば、個別最適化こそ、もっとも効率的で、最も合理的な学び方です。
6.時代が求めているのは「個別最適化」そのもの
文部科学省が「個別最適な学び」を最重要テーマに位置づけているのは、単なる教育の流行ではありません。
社会そのものが激変し、
“個別最適化されていない学びでは未来を生き抜けない”
からです。
ここでは、その背景を深掘りします。
① 正解がひとつの時代は終わった
かつて求められていたのは、
「決められた答えを、早く正確に出す力」でした。
しかし現代は違います。
- 正解が複数ある
- 正解が存在しない
- 正解がすぐに変わる
こうした社会では、
「自分で問いをつくり、答えを考え続ける力」
が最も重要になります。
この力は、画一的な学びでは育ちません。
② 職業とスキルの“賞味期限”が急速に短くなった
- 10年前に存在しなかった仕事が今は主流
- 10年後、今の仕事の半分が別の形になる
- AIが業務を高速で置き換えていく
- 情報量は爆発的に増加し、選択肢が無限に
今の大人が学んだ方法では通用しない場面が増えています。
求められるのは、
“変化に適応し続ける柔軟性”。
そしてその柔軟性は、
「自分に合う学び方を知り、自分で伸びる力」
と深く結びつきます。
③ 世界基準では“個別最適化”はすでに当たり前
OECDや世界の教育研究は、
早くから「パーソナライズド学習」の重要性を示してきました。
理由は明確です。
個に合った学びは、
学力・創造性・非認知能力を、長期的に伸ばす
ことがデータで示されているからです。
日本でも、
- 学習者主体
- 探究
- ICT活用
- 個別最適化
が教育改革の中心になりつつあります。
ナガシマ教育研究所が十数年前から大切にしてきた考え方が、
ようやく時代に追いついてきたと言えるでしょう。
④ “平均的な人材”より“唯一無二の人材”が求められる時代
未来社会で求められるのは、
「強みを持つ100人」であり、
「平均的な100人」ではありません。
だからこそ、
- 発達の違い
- 得意不得意
- 興味
- 認知特性
- 感情の特性
を理解し、一人ひとりが違う伸び方をできる環境が必要なのです。
個別最適化とは、
子どもを特別扱いすることではありません。
“その子が未来を生き抜くための、もっとも合理的で本質的な教育”なのです。
そして次の時代を生き抜く鍵は、平均ではなく、“その子らしさ”の中にあります。
7.最後に――「一人ひとり違う」ことこそが力になる
教育の目的は、“子どもを平均に近づけること”ではありません。
子どもを型にはめるのではなく、その子だからこそ伸びる力を育てること。
画一的な学びでは失われる個性も、個別最適化された学びならこそ輝き始めます。
ナガシマ教育研究所はずっと、
- 子どもを取り残さないこと
- 子どもの今に合わせること
- その子だけの“伸び時”を逃さないこと
を大切にしてきました。
学びは競争ではありません。
学びは“その子の人生を支える力”です。
これからも私たちは、すべての子どもが “その子らしく伸びていく学び”を追求し続けます。
ナガシマ教育研究所

横浜市の学習塾・学童保育です。3教室を展開しています。
「学びを通して子どもたちの幸せに貢献する」を理念としています。
中学受験、高校受験、大学受験に対応しています。
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